AI機能とホログラム技術の合体で注目されるマテルの「ホログラム・バービー」の発売が、2018年に延期

2月に開催されたニューヨーク・トイ・フェア(アメリカ、ニューヨーク)で、「AI機能」と「ホログラム技術」の合体という斬新さで注目を集めた「ホログラム・バービー」。年内発売が予定されていた待望の最新バービーでしたが、こにきて急きょ2018年への発売延期が発表され、先行予約用に公開されていたWEBページも閉ざされてしまいました。

アメリカの小売業界にとって年間最大の商戦期と言えば11月末から始まる「ホリデーシーズン」ですが、その準備入りを目前に控えた時期での発売延期発表の裏には何があったのでしょうか。

アリストテレス・ベビー・モニター

実は、今回の販売延期の伏線とも言える出来事が、すでに10月に起こっていました。

マテルは、今年1月に開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(アメリカ、ラスベガス)で、子供向けスマートスピーカー「アリストテレス・ベビー・モニター」の製品プランをアナウンスしたのですが、10月になって突然、その計画を中止すると発表したのです。

中止の理由は、マテルの新しい技術戦略にそぐわないということでした。

その決定は、7月にマテルのCTO(最高技術責任者)に就任したばかりのSven Gerjets氏が判断したとされています。Gerjets氏のCTO就任とともにマテルでは技術戦略の見直しが急ピッチで進められ、その結果「アリストテレス」の中止と「ホログラム・バービー」の延期という結果になったというわけです。

コネクテッドトイと子供たちの安全

これらの発売中止及び延期は、アメリカ社会が持つ、「インターネットを悪用した犯罪から子供たちを守ろう」という強い意識を反映しています。

Gerjets氏のCTO就任と同じく7月、米国FBI(連邦捜査局)は、『インタネット・コネクテッド・トイは子供たちのプライバシーと身の安全を脅かす危険性がある』という警告を発していますが、アメリカではそれほど「ネット接続が可能な玩具の危険性」が注目されているのです。

そのような社会的背景を受けGerjets氏は、「安全性を担保できない製品をマーケットに出荷すべきではない」という判断に至ったのでしょう。ホリデーシーズンの目玉商品を失ったことによるビジネス面でのマイナスは大きいと想像できますが、子供たちの安全を守ることを最優先にした姿勢がブランディングにもたらすプラス効果も大きいと思います。

先端テクノロジーをベースにした製品の開発は玩具業界にとって避けて通れない道です。その中でマテルが今後どのように子供たちの安全を担保していくのかという点に注目したいと思います。